
なぜ、この仕組みなのか

一般社団法人国際メゾンディレクトゥール協会 代表理事の東城真利子です。
「なぜ、アールポーセはこのようなカリキュラムや仕組みなのですか?」
そんなご質問をいただくことがあります。
このページでは、アールポーセを立ち上げた理由と、この学びに込めた想いをお伝えしたいと思います。
理論から組み立てた技術
ポーセリンアートに触れるとき、多くの方が最初に扱うのが転写紙です。
けれど以前は、貼り方ひとつをとっても、体系立てて学べる機会は多くありませんでした。
「何分水につけるのか」
「一度剥がしたら使えないのか」
経験則として受け継がれてきた方法も多く、人によって教え方が異なることも少なくありませんでした。
道具や素材についても同じです。
必要以上に消耗品として扱われているものもあり、私自身も、教わった通りに使うことが当たり前だと思っていた時期がありました。
だからこそ私は、
「なぜ、その方法なのか。」
「本当に、それが一番よい方法なのか。」
という視点から、一つひとつを見直し、技術を理論として整理しました。
そうして生まれたのが、アールポーセです。
理屈から理解して学ぶことで、白磁や転写紙、絵の具もメーカーに縛られることなく、自分で考え、選び、応用できる力が身につくと考えています。
なぜ、カリキュラムが少ないのか
アールポーセでは、必要な技術を効率よく、そして無理なく身につけられるよう、カリキュラム全体を設計しています。
ベーシックでは約4時間で基礎を学び、デカールコースでは5作品、ペイントコースでは7つのカリキュラムを通して、段階的に技術を習得していきます。
以前、作品数の多いカリキュラムを指導していた頃、「作品を終わらせること」が目的になってしまう方もいらっしゃいました。もちろん、それが悪いわけではありません。
ですが私は、一つひとつの作品と丁寧に向き合う時間を大切にしたいと考えました。
そこで作品数を必要最小限に絞り、一つの作品の中にできるだけ多くの技術や考え方を詰め込みました。数を増やすことではなく、一つの作品から深く学ぶこと。
それが、アールポーセのカリキュラム設計の考え方です。
正解を教えるのではなく、「好き」を育てる学び
アールポーセには、決められたデザインはありません。白磁も自由。転写紙も自由。組み合わせも自由です。同じ課題に取り組んでも、完成する作品は一人ひとり異なります。それは、「見本通りに作ること」が目的ではないからです。
私が大切にしているのは、「どんな作品を作りたいですか。」「あなたは、どちらが好きですか。」という問いです。自分で考え、選び、試してみる。その積み重ねが、自分らしい作品を生み出す力になります。新しい技術を知ることも大切ですが、それ以上に、自分の「作りたい」を形にできる力こそが、一生ものの技術だと私は考えています。
私がアールポーセで育てたいのは、作品を作れる人ではありません。自分の「好き」を形にできる人です。基礎を身につけ、自分で考え、工夫し、表現できるようになること。その力は、一つの作品だけではなく、その先のものづくりや教室運営、そして人生そのものを豊かにしてくれると信じています。
学んだ分だけ、費用がかかるということ
「全部で費用はいくらかかりますか?」このご質問は、とてもよくいただきます。
アールポーセには、指定の教材はありません。必要なのは、その時に学ぶレッスン料と、ご自身で選んだ材料だけです。どんな作品を作るかによって、使う白磁も転写紙も異なります。
だからこそ、費用も一律ではありません。
私は、「学んだ分だけ費用がかかる」という仕組みが、とても自然だと考えています。
決められた作品を作るだけであれば、単発のレッスンでも十分楽しめます。
けれど、自分の好みを形にできるようになりたい、自分でデザインを考えられるようになりたいと思うなら、体系的に学ぶことには、それ以上の価値があります。その学びの証として、ディプロマがあります。資格そのものではなく、その過程で身につけた「考える力」と「表現する力」こそが、何よりの財産だと思っています。
失敗を、恐れなくていい
技術の中には、「失敗したときにどう修正するか」という考え方も含まれています。
もちろん、やり直した方がよい場面もあります。けれど、少しの工夫で作品を美しく仕上げられることもあります。私は、失敗を「やり直すもの」ではなく、「どう活かすか」を考える機会だと思っています。失敗を恐れなくなると、挑戦することも自然と増えていきます。
その挑戦の積み重ねが、自分だけの表現につながり、自分らしい作品を生み出していくと信じています。
どの教室で学んでも、安心して学べるように
「先生によって教え方が違う。」「学び直したいけれど、どこで学べばいいか分からない。」
そんな声を、この業界で数多く耳にしてきました。
だからこそアールポーセでは、どの教室で学んでも、同じ考え方と技術を学べる仕組みを大切にしています。
通信講座のカリキュラム動画は、すべて私自身が制作しています。資格取得後も、いつでも見返し、学び直せる環境を整えました。これまで多くの受講生を指導する中で積み重ねてきた細かなコツや、失敗しやすいポイント、伝え方まで、一つひとつ動画に込めています。
教える立場になってからも、「迷ったらここへ戻ればいい」と思える場所があることは、大きな安心につながります。
また、講師として活動する方には登録制度を設け、資格を取って終わりではなく、その先も成長し続けられること。それが、生徒さんにとっても、講師にとっても、安心につながると考えています。
手順ではなく、「考え方」を伝えたい
アールポーセでは、あえて細かな工程だけを書き並べたマニュアルは作っていません。もちろん、すべてを文字にすることはできます。けれど、「書いてある通りにすればできる」という学びだけでは、応用する力は育ちません。私が伝えたいのは、「やり方」ではなく、「なぜ、その方法なのか」という考え方です。
だからこそ、動画では実際の手の動きや力加減、目線、判断のタイミングまでお伝えしています。技術は、覚えるものではなく、理解するもの。理由を理解しているからこそ、新しい素材やデザインに出会っても、自分で考え、応用できるようになります。
私が育てたいのは、同じ作品を作れる人ではありません。技術を理解し、自分で判断し、生徒さん一人ひとりに合わせて伝えられる講師です。
教えることが、学びになる
長く教えていると、同じ作品を繰り返し教えるだけでは、先生自身の成長も止まりやすいと感じることがあります。一方で、アールポーセでは、生徒さん一人ひとりが違う作品を作ります。
だからこそ、先生も毎回考えます。
「このデザインなら、こんな方法もありますよ。」
「もっと素敵に仕上げるには、どう伝えよう。」
生徒さんに合わせて提案し、一緒に作品をつくり上げていく。その積み重ねが、先生自身の経験となり、新しい学びになっていきます。
私は、教えることは、一方的に知識を伝えることではないと思っています。生徒さんと一緒に考え、一緒に成長していくこと。そんな教室が増えていってほしいと願っています。
発表の場があるということ
IMDでは、協会設立当初から「コレクションパーティー」という作品発表の場を続けています。これまでに27回開催してきました。作品は、完成したものを見るだけでは伝わらない魅力があります。
「なぜこの作品を作ったのか。」
「どんな想いを込めたのか。」
その背景を知ることで、作品はもっと豊かに見えてきます。
発表の場があるからこそ、一つのテーマと向き合い、自分らしい表現を考える時間が生まれます。
また、他の方の作品を見ることは、新しい技術を学ぶこと以上に、自分の感性を広げるきっかけにもなります。作品を発表することは、評価されるためではありません。自分の「好き」と向き合い、その歩みを振り返る時間でもあるのです。
「好き」を育てるということ
私は、「これはどう貼るんですか。」「これはどう描くんですか。」と聞かれたとき、すぐに答えをお伝えすることはあまりありません。
その前に、「あなたは、どんな作品を作りたいですか。」と、お聞きすることがあります。
やり方だけを知っていても、それだけでは応用することはできません。
けれど、「こう表現したい」という想いがあれば、基礎の技術を応用しながら、自分で答えを見つけられるようになります。
だから私は、「どちらが好きですか。」という問いを大切にしています。正解を探すのではなく、自分の「好き」に気づくこと。それが、自分だけの世界観につながっていきます。
そして、自分らしい作品が生まれた瞬間、生徒さんの表情がふっと変わります。その瞬間は、今でも私にとって、この仕事を続ける一番の喜びです。
資格は、目的ではなく支えです
資格がなくても、教えることはできます。それでも資格制度を設けているのは、「これだけ学んできた」という自信になり、迷ったときに相談できる場所があることに価値があると考えているからです。
資格を取ることがゴールではありません。
その先で、自分らしく活動し、学び続けられること。それが何より大切だと思っています。
だからこそIMDは、資格を発行するための協会ではなく、同じ理念を共有し、ともに成長していける学びの場でありたいと考えています。

好きなことで、誰かに喜んでもらうということ
こうした考え方は、「協会について」のページでご紹介している書籍の中でも綴っています。よろしければ、ぜひあわせてご覧ください。
私は、「資格を取ること」がゴールではなく、その先にある暮らしや人生が豊かになることを何より大切にしています。
だからこそ、技術だけではなく、学び続けられる環境や、安心して活動できる仕組みまで含めて設計してきました。
アールポーセで身につけてほしいのは、作品を作る技術だけではありません。自分の「好き」を見つけ、それを形にし、誰かに喜んでもらえる力です。その積み重ねが、自分らしい暮らしや仕事につながっていくと、私は信じています。
IMDはこれからも、「お気に入りを形に。お気に入りを仕事に。お気に入りをもっと暮らしの中に。」という理念のもと、一人ひとりが自分らしい「好き」を育み、その先で誰かを笑顔にできる場所であり続けたいと願っています。
